遙か彼方



「…美桜?」

突然かけられた声に私の肩がビクつく。

ずっと待っていた声の筈なのに、今は来て欲しくなかった。

だって私は今膝を抱えて泣いているから。

私はいつも彼の前で泣いている。

だからお父さんのことは全然へっちゃらだって伝えたかった。

なのに泣いていたらへっちゃらなんて嘘だってバレてしまう。


私は彼に気付かれないように涙を拭った。

「泣いてたの?」

だけど見破られたらしい。

私は顔を上げずに首を横に振った。


近付いて来る足音が聞こえたと思ったら、私の体が彼に包まれた。

俯きながらも目を開けて確認する。

彼は私の前に座り両手を私の背中に回してる。

頭が重たいのは多分顔を乗せられているから。


「泣いたっていいんだよ。我慢しないで」

「もう泣きたくない…」

「美桜…」

「もうこんな思いしたくない…」

「……何が、あったの?」






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