遙か彼方
「“大丈夫、大丈夫”って自分に言い聞かせるようにして平気なフリしていたけどやっぱり駄目だった」
「……」
「お父さん私の顔も見てくれなかった!」
私の震えた声は少し大きな声を出しただけで、図書館の隅で響く。
ここじゃ声さえも自由に出せないのか。
感情を押し殺して。
言いたいことを胸の内に秘めて。
ただ時の流れに身を任せる。
苦しい…。
苦しいよ…。
私の頭を撫でるこの手は唯一安らぎを与えてくれる。
「美桜」
私の名前を彼が呼ぶ。
この声も。
この手も。
この体温も。
全てが愛おしい。
葵。
私は貴方がいないと生きていけない。
宇宙人なんてどうでもいい。
私は貴方が───────…。
「……美桜ちゃん?」
私が彼の背中に手を回そうとしている時だった。
「……佐山さん」
本棚の陰から佐山さんが現れたのは。