遙か彼方
彼も佐山さんの声で後ろを振り向く。
佐山さんは私たちを見て驚いた顔をしている。
何故?
何故ここに来たの?
「美桜ちゃん…誰?」
佐山さんは彼に視線を送る。
昼間の彼はいかにも怪しい人物だった。
「………」
“誰?”と訊かれて何と答えればいいんだろう。
友達?
知り合い?
仲間?
彼を指す言葉が見当たらない。
困惑していると彼が動いた。
そしていつもより少し離れた位置に胡座をかいて座る。
「初めまして。日向です」
彼は少しフードを上げて、ペコッと頭を下げた。
「……佐山です」
佐山さんは立ったまま私たちに近付こうともしない。
私はといえば、さっきのこともあり佐山さんの目が見れずにいた。
どうしよう…。
なんだか気まずい…。