遙か彼方
彼が戻ってくるのを待つ時間は、さっき彼が図書館に来るのを待っていた時間よりも長く感じられた。
その後聞こえてきた少し荒い足音は、急いで戻ってきてくれた証拠。
ドタドタと聞こえる足音に私は顔を上げた。
「そんな泣きそうな顔しないでよ」
彼はそう言って戻ってきてくれた。
さっきの口パクの言葉は私の思った言葉で間違いなかったらしい。
「彼にだけ帰ってもらう訳にもいかなかったから」
「うん。わかってる」
彼がようやくいつもの位置に胡座をかいた。
「ごめんね」
私はただ我が儘を言っているだけなのに、彼が謝る必要はない。
私は首を横に振った。
すると彼の手が伸びてきて、私の頭をポンポンっと優しく撫でる。
こんな時に不謹慎かもしれないけれど、……ドキドキする。