遙か彼方
「……僕の家族はもう一人も居ないんだ」
一瞬できた沈黙の間を誤魔化すように彼が話し出した。
「一人も?」
「両親と兄が居たんだけど、その…ハルカの病気でね」
そこまで聞いて昨日の彼の言葉を思い出す。
『家族を頼らないで誰を頼るの?』
彼には頼りたくても頼る相手がいないんだ。
ましてや地球に来た今、彼が頼れる人はいるんだろうか。
「両親は2人とも同じ歳で、17歳の時に兄が生まれてその8年後僕が生まれたんだ」
「……え?8年後?」
17歳でお兄さんが生まれたのも驚きだけど、私は8年後のほうが気になった。
8年後って25歳じゃ?
「気付いた?僕が生まれてすぐ両親は他界した。まぁ産むななんていう決まりは無いけど、暗黙の了解で一般的には20代で子供は作らない。まして25で産む人なんてまずいない」
それは自分の母親を否定する言葉のはずなのに、声色はすごく穏やかだった。
「だけど僕は生まれた。それは当時8歳の兄の強い願望からだった」
「でも、それだけじゃ…」
「うん。ハルカではね小学校から完全寮制なんだ。細かいことを言ったらキリがないんだけど、地球とは全く違う」
それは、そうか。
まず寿命が25歳の世界が私には全く理解ができない。