遙か彼方
「それって……あんまり届いてほしくないもの?」
「まぁ…ね」
「……葵にも、届いたの?」
彼は口許を緩めて笑う。
それは肯定の意味なんだろうと思う。
遙か遠くの星、地球。
そこに行くということは、彼らにとってどういうことなのだろう。
きっと、私がハルカに行くということとは全く違った心境なんじゃないかと思う。
彼らの苦しみは想像すら出来ない。
「地球から帰ってきた兄が言ってたんだ」
「…なんて?」
「“ヒマワリがとても綺麗だった”って」
「ヒマワリ」
彼の好きな花。
「これが僕がヒマワリを好きな理由。前に訊かれた時答えてあげられなかったから」
そういえばそんなこともあった。
あれはまだ私が彼の正体を知らない時。
「太陽に向かって大きな一輪の花を咲かせる姿がとても魅力的でかっこいい」
初めて聞く彼がヒマワリを好きな理由は、彼がお兄さんのことを好きだったということが含まれた素敵な理由だった。