遙か彼方
夕飯の為に私は一度寮に戻って、またすぐ図書館に戻った。
図書館は閉館していて真っ暗なのに、入り口には鍵がかかっていない。
月明かりと、外灯の明かりを頼りに奥まで進むと。
ライオンの鬣(タテガミ)のような髪をした青年が、窓の外を眺めている。
私が彼に近付くと、彼は後ろを振り向いた。
「おかえり」
「ただいま」
金色の瞳が私を映す。
目尻を下げて微笑む彼が差し出した掌(テノヒラ)に、私の手を乗せるとグッと引っ張られた。
その拍子に彼の胸へと飛び込む。
それはまるで恋人同士のよう。
この腕の中にいる理由を私は持っていないけど、ここは一番落ち着く場所。
だってここは好きな人の腕の中だから。