遙か彼方
そして、二週間後電話を受けて初めてお母さんの異変に気付いたお父さんは佐山さんを家に向かわせた、と。
自分で来ればいいのに。
こんな時さえ来てくれない。
「教授は忙しいんだ」
佐山さんはすまなそうに言った。
佐山さんがそんな顔をする必要はない。
でも、ひねくれてしまった私の性格は、口を開けば暴言を吐いてしまいそうだった。
だから黙って前を向いて話を聞いていた。
佐山さんは自分が話すばかりで、私の話は聞いてこない。
お母さんと何故連絡が取れないのかとか、私は何で平日に家に居るのかとか、聞きたいことは山程ある筈なのに。
でもそれが、何も話したくない私にはちょうど良かった。
「家の鍵はね、教授に借りたんだよ」
……当たり前でしょ。
そんな聞かなくてもわかることまで教えてくれた。