遙か彼方
布団から出てまだボーっとする頭で扉まで歩いていくうちに、それから何度も“開けなさい!!”と怒鳴る声の主がわかった。
……お父さんだ。
この声は間違いなくお父さんだ。
何しに来たの?
何で怒鳴っているの?
私怒られるの?
……怒っているのは私のはずなんだけど?
訳がわからず扉の前まで来てしまった。
「美桜!」
止(ヤ)むことのない声に、扉を開けたくないという感情でいっぱいになる。
でもここを開けない限り収拾がつかない、と諦めて扉を開けた。
静かにゆっくり開けた扉は、外側から勢い良く開けられた。
「ひゃっ!」
その勢いに体を持っていかれそうになった私は、慌てて手をドアノブから離した。
「美桜!」
扉の前にいたのはやっぱりお父さんだった。
汗だくのお父さんは私を見据える。
昨日は見向きもしなかった瞳が私を捉(トラ)える。
それが、嬉しい……と思ったのは一瞬だった。