遙か彼方


嬉しくない。

全く持って嬉しくない。


この人は全ての元凶だ。

昨日会いには行ったけど、許している訳じゃない。

ただ……顔が見たかった。

そりゃ文句を言おうとか泣きわめいてやろうとか、色々考えたけど。


それでも居場所を知って、顔は見れなかったけど…ちゃんとそこに居るってわかっただけで良かった。

安心した。

今はまだそれでいいと思った。


なのに……。

何で昨日の今日で私に会いに来るの?

平気な顔で会いに来るの?



「何…?」


私は下から睨み上げるようにして見つめ返し、低く唸るような声を出した。


「何していたんだ」


お父さんは今まで怒鳴っていたのが嘘みたいに低く、静かに言った。


「……寝てたに決まってるでしょ」

「違う。昨日の夜は何していたんだ」

「は?」


“昨日の夜何していたんだ”?




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