遙か彼方


「彼がどういう人物なのか知っているのか?」


お父さんは私の答えを聞いてもいないのに、さも私がお父さんの言っている“彼”と会っているという体(テイ)で話を進める。

でもそれはきっとお父さんの中では確信していて、私に訊いてはきたけど、ただの確認に過ぎない。


お父さんの言っている“彼”。

佐山さんでなければ、……葵でしかない。


「知っていて彼と付き合っているのか?」


その言い方が気にくわなかった。

彼を否定されているような気分になった。


「……いけない?」


だから彼と会っているということを含んだ言葉を吐いた。

私のその言葉にお父さんの眉がピクッと反応する。


「辛い思いをするのはお前なんだぞ!」

「……何!?」


私の為、みたいな言い方。

再び大きな声を出したお父さんにつられて、私の声も荒くなる。


「だから、関係ないって言ってるでしょ!」

「彼の命はあと6日なんだぞ!!」


…………え?





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