遙か彼方


「すまなかった」

「……はい?」


突然何を言い出すのかと思えば、お父さんは謝ってきた。


何に対しての謝罪?

何で今?


「私のせいですまなかった」


お父さんは同じ言葉を繰り返す。

何に対して謝っているのかはわからないけれど、私はお父さんを許す気にはなれない。

謝られたって気持ちの変化は1ミリ足りともない。


「何が?」

「……ここの生活はどうだ?」


あぁ。

この部屋を見てそんなことを言い出したのか。


「別に」

「……そうか」


私の部屋は殺風景で、自分で言うのもなんだけど女の子の部屋とは到底思えない。

それも私の生活から考えれば何の不思議もなく、私からしてみれば当たり前の風景。

寝ることくらいにしか使っていないこの部屋は、あまりにも物が少ない。


そのことにお父さんは驚いたんだろう。

こんな生活をさせてしまって“すまなかった”という意味の謝罪だったんだろう。




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