遙か彼方
でも今そんなことはどうでもいい。
今そんな話をする気はしない。
「昨日も…本当に手が離せなくて……」
「いいから座って」
私はお父さんの話を敢えて遮った。
「あ、あぁ…」
私とお父さんはテーブルを挟んで座る。
この感覚は久しぶりだ。
食卓ではないけれど、家族とテーブルを挟んで座るなんて二度とないんじゃないかと思っていた。
ここに、足りない人がいる……。
お母さん…。
「美桜…?」
「何でもない…」
私は溢れそうになった涙を呑み込んだ。
お父さんの前で泣くなんて絶対に嫌。
お父さんに心配されたくない。
誰のせいでこうなったのかと、それこそ怒鳴り散らしてしまいそう。
だから今はそれどころじゃないんだってば。
私は早く彼の話が聞きたいんだ。