遙か彼方
そうして着いた先はお父さんの大学───…、の隣の学生寮だった。
マンションのようなその寮は大学の隣の敷地に建っている。
新しい感じもしなければ、特に古い感じもしない。
中に入れば階段とエレベーターが両脇にあって、その奥の一本道にはドアが向かい合って並んでいる。
一番奥には食堂があった。
寮の大きさに比べてあまり広くない食堂には寮母さんがいた。
寮母さんはしゃがれた声が似合う、さばさばした感じの人。
「何かあったら何でも言うんだよ!」
腰に手を当てて仁王立ちの寮母さんは“頼りになる人”、そんな感じだった。
「じゃあ貴女の部屋は301号室、三階のエレベーターの隣ね」
……薄々は気付いていたけど、どうやら私はここに住むらしい。
佐山さんは一番肝心なところが抜けていた。
まあいいか。
あの家に居るよりはいい。
コンビニ弁当にも飽きたし、お金も尽きた。
寮のご飯は食べ放題。
お父さんが食費やら何やら出してくれるらしい。
でも寮って……。
いわゆる集団生活?