遙か彼方


パンクしそうな頭をぶるぶる振った。

落ち着かせる為に息を大きく吐いて、鼻からスッと空気を吸い込み口を開く。


「普通は半月で帰るって?」

「普通は25歳直前の一ヶ月前に来て半月で帰る。でも彼は違う。18歳で来ている」

「どういうこと?」

「彼がどうして18歳で地球に来たのかは私も知らない。だが、“18歳”という新しい資料は研究を大きく飛躍させた」


そう言うお父さんの目の色が変わった。

“研究者の目”になる。


「今後こんなことはないかもしれない。だから彼にはギリギリまで残ってもらっている。研究の為なんだ。それは彼らの為ということなんだ」


人として間違っている。

人の命を研究の為に亡くしてもいいと言っている。

目の前のお父さんにゾッとした。



「……バカじゃないの?」

「あ?」

「バカじゃないの!そんなの人殺しと一緒だよ!!」


泣くまいと思っていた意思とは裏腹に、涙は勝手溢れだした。


お父さんがこんな酷い人だと思っていなかった。

彼のことを思うと胸が潰れそうな程痛い。




< 130 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop