遙か彼方
パンクしそうな頭をぶるぶる振った。
落ち着かせる為に息を大きく吐いて、鼻からスッと空気を吸い込み口を開く。
「普通は半月で帰るって?」
「普通は25歳直前の一ヶ月前に来て半月で帰る。でも彼は違う。18歳で来ている」
「どういうこと?」
「彼がどうして18歳で地球に来たのかは私も知らない。だが、“18歳”という新しい資料は研究を大きく飛躍させた」
そう言うお父さんの目の色が変わった。
“研究者の目”になる。
「今後こんなことはないかもしれない。だから彼にはギリギリまで残ってもらっている。研究の為なんだ。それは彼らの為ということなんだ」
人として間違っている。
人の命を研究の為に亡くしてもいいと言っている。
目の前のお父さんにゾッとした。
「……バカじゃないの?」
「あ?」
「バカじゃないの!そんなの人殺しと一緒だよ!!」
泣くまいと思っていた意思とは裏腹に、涙は勝手溢れだした。
お父さんがこんな酷い人だと思っていなかった。
彼のことを思うと胸が潰れそうな程痛い。