遙か彼方
「ま、待て!」
お父さんは慌てたように両方の手のひらを私に向ける。
「何!?」
「ギリギリまでと言っただろう!」
「え!?」
「とりあえず落ち着きなさい」
何?ギリギリまで?
それってどういうこと?
「…落ち着いた。話して」
「あぁ。だからギリギリまでなんだ。彼はそろそろハルカに帰らせる」
……帰らせる?
「帰ったら大丈夫なの?」
「あぁ。発病が早まってしまうことに変わりはないがな」
「早まるってどのくらい?」
「数日と言ったところだ」
なんだ…。
大丈夫なのか…。
安心した私は涙を拭いた。
そしてまた、ふーっと息を吐く。
「……酷いこと言ってごめんなさい」
「いや、いいんだ。実際彼が危険なことに変わりはない」
「だから」とお父さんが私を見つめる。
「彼に会うのはやめなさい」