遙か彼方
時間は気にすれば気にする程経つのが遅い。
5分進むのがとても長い。
彼といた時は何をしていたっけ。
特別何かをしていた訳でもなく、ヒマワリを眺めながら私のくだらない話を聞いてくれた。
彼と過ごす時間はとても短く感じた。
楽しい時間というのはあっという間に過ぎてしまう。
逆ならいいのに。
つまらない時間があっという間に過ぎて、楽しい時間が長く感じられたらいいのに。
腕時計を確認すると、また5分しか経っていなかった。
彼が図書館に来たのは、夜になってからだった。
晩ごはんを食べ終えて、図書館に帰ってくると彼がいた。
彼は珍しく図書館の前で空の月を眺めていた。
図書館の扉の前の石段に座って月を見上げる様(サマ)は、正に妖艶。
雲一つない夏の夜空は、明るく光る月の光を届ける。
彼の白すぎる肌を強調して、白金の髪を光らせる。
金の瞳を一際(ヒトキワ)綺麗に映し出す。
それはまるで……。
「妖怪みたい…」