遙か彼方
「あっ美桜。って妖怪はないでしょ」
ボソリと言った私に彼が苦笑いを向けた。
「いや本当に。吸血鬼って感じ」
そう言って笑いながら私は彼の隣に座る。
「あぁ。吸血鬼ってハルカの人のことだよ」
「え?そんなに昔から地球にいるんだっけ?」
冗談で言ったことに逆に私が驚かされた。
「うん。血は吸わないけど」
「えぇ?それ“吸血鬼”じゃないじゃない」
「あぁ本当だ。でももとはそうなんだよ。血を吸うってのは後からついたんじゃない?」
彼が楽しそうに話すから、何だか私も楽しくなった。
「じゃあ吸血鬼って実在するんだ」
「モデルはね。あっ幽霊もそうかも」
「えぇ?幽霊も?」
「あー…。今の嘘。適当に言った」
「え?」
「楽しいね」
何かわからないけど彼は上機嫌らしい。