遙か彼方


図書館のいつもの場所に座る。


さっきから思っていたんだけど、私は意外と落ち着いていた。

お父さんからあんな話を聞いた後で、彼と会ったら冷静ではいられなくなるんじゃないかと思っていた。

だけど、私は案外いつも通り。

満月のおかげなのか、今日1日考える時間がたっぷりあったおかげなのか。


「葵。訊きたいことがある」

「何?」


彼は相変わらずの笑顔を私に向けて、首を傾げる。


「今日、お父さんと話した」


そう言っただけで、彼の顔色が変化する。

彼の笑顔が消えた。


「……」

「全部聞いた」

「……そう」

「葵はどうして地球に来たの?」

「……それはね」



─────理由なんて、聞かなければ良かったかもしれない。

私は彼と一緒にいられるだけで良かったのに。

彼の全てを知りたいと思ってしまったばっかりに。


私は…、知りたくもない彼の真実の姿を知ってしまう。




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