遙か彼方
「死んでもいいと思ったから」
「……」
私はあまりにも衝撃的な言葉に言葉を失った。
「両親も兄もいない。結婚すらしていない。ハルカにいたって独りなんだ。だからこの命をハルカの為に使うしかないと思った」
わからない。
独りだからと言うことが、命を捨てる理由になるの?
「自分で今すぐ地球に行かせてほしいって志願したんだ」
命を捨てるなんて言い方は間違っているのかもしれないけれど、そうとしか思えない。
だって彼が来なくても、他に派遣されてくる人はいるはず。
まだ18歳でそんなことしなくてもいいはず。
25歳までまだまだある。
結婚だってまだ諦める歳じゃないはず。
人生諦めるの早すぎる。
そんなの命を捨ててるようにしか思えない。
「でもハルカに帰る気はあるでしょ?」
「……」
何も言わなくなった彼は困惑の表情を作る。
「……ない、の?」
彼は悲しそうに笑った。
その笑顔の意味は何?