遙か彼方
「正直、どっちでもいい」
「……」
「帰ったって僕を待ってくれてる人はいないし。だったら美桜と少しでも長くいたい」
「……私?」
「ん?」
「私が葵のここにとどまる理由なの?」
ショックだった。
私がいるせいで彼を地球に引き留めている。
私がいなかったら彼はとっくにハルカに帰っていたかもしれない。
「そうだね。美桜がいなかったら明日帰るつもりだった」
「え、明日?」
彼は私がいなくても今日までは地球にとどまっていたらしい。
「満月が見たかったんだ。満月を見たら帰るつもりだった」
「じゃあ明日帰りなよ」
「え?」
「私のことなんていいから帰った方がいい」
彼の期限はあと6日。
そんなにギリギリまでいることはない。
私の為に残ると言うのなら、尚更帰ってほしい。