遙か彼方
握る手に力が入る。
そんな私たちの繋がった手に彼の視線が移ったのがわかった。
そして顔を上げた彼の瞳は力強く私を見つめる。
「わかってないのは美桜だよ」
「え?」
私の何がわかっていないと言うのか。
彼は私の言うことをわかってはくれない。
“帰る”と言ってはくれない。
「独りの寂しさ、美桜にだってわかるでしょ?」
……わかる。
独りは凄く辛い。
辛いのに、辛いと言う相手もいない。
吐き出す場所がないせいで、一人で全部抱え込んで余計に辛い。
だから、葵という存在は私にとって必要不可欠な存在。
だから私は小さく頷いた。
「独りになる為に帰るなんて嫌だ」
「…でもハルカにだって友達はいるでしょ?」
「美桜がいないと意味がない」
「な、に…言ってるの?」
私は彼にそんなにも必要とされているの?
こんなに人に必要とされることは初めてで、どうしたらいいのかわからない。