遙か彼方


「僕は美桜と生きたい」


母親に捨てられた私には、それはどんな言葉よりも嬉しかった。

私を必要としてくれている。

こんな私を。


「でもっ……」


でも、彼はハルカに帰らなければいけない。

彼が何と言おうとそれは絶対。

帰ると説得しなければいけない。


涙が止まらない。

これは嬉し涙なのか、悲し涙なのか。

理由のわからない涙は止まらない。


「美桜、一緒にいよう」


泣いているせいで声が出せない。

私はただ嗚咽を漏らすだけだった。


それでも私は首をブンブン横に振った。


「美桜……」


悲しげな瞳で見つめる彼に、私はただ首を振った。

すると握っていた手を離され、頭からガバッと抱き付かれた。


「首振らないで…」


私の頭上からは彼の切ない声が聞こえてくる。

私は空いた手で目の前の彼の胸元をギュッと掴んだ。


「…い、嫌だ!……私、だって…」

「美桜?」

「私だって嫌だ!」


私はとにかく叫んだ。




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