遙か彼方
「死なないで!」
喉が痛い。
「死んだら嫌だ!」
目の奥が痛い。
「生きてよ!」
鼻が痛い。
「私の為に!……生きてよ」
胸が痛い。
“私の為に”なんて卑怯な言い方。
でも、それでも私は彼に生きてほしい。
「死んでもいいなんて思わないで…」
生きていればいいことはある。
私は彼に出会った。
親に捨てられてどん底をさ迷ったけれど、また笑顔を取り戻せたのは彼のおかげ。
だから、死んだらそこでおしまい。
そのあとに待っているかもしれない幸せもなくなる。
「生きてもう一度会おう」
「……」
「私、いっぱい勉強してハルカに行くから」
「……」
「ね?約束」
フッと私を抱き締める力が弱まったかと思うと、彼は後ろに下がりペタンと力なく座った。