遙か彼方
寮に来ても私の引きこもりは変わらなかった。
というか…。
部屋の外に出たら大学生と遭遇してしまうんじゃないかと、部屋の外が怖かった。
夕飯の時間を過ぎても食堂へ行けないでいると、寮母さんが迎えに来てくれた。
わざわざ三階まで…。
食堂に行かないと毎回迎えに来てくれそうな、人の良い寮母さん。
迷惑を掛けるのは嫌だ。
私は意を決して大学生の世界に飛び込んだ。
……けど飛び込み切れず、食堂の隅で一人黙々と、早くこの時間が終われと思いながら食べた。
食堂に来る大学生は皆仲間内で来ていた。
仲間に入る隙なんて無さそう。
……って入る気は更々無いけど。
仲間内の一人が私に気付けばひそひそ話を始め、皆が私に視線を向ける。
“誰あの子?”っていう目。
私はその視線に気付きながらも、目を合わせないように決して顔を上げなかった。
苦痛だ。
苦痛でしかない。
二週間のだらけた食生活で胃袋がすっかり小さくなっていたらしく、申し訳ないと思いながらも半分残してそそくさと部屋に戻った。