遙か彼方
「ヒマワリ!」
ヒマワリ畑の真ん前に来ると、彼がいきなり叫んだ。
そう、私が彼を連れて来たのは“ヒマワリ畑”だ。
佐山さんと買い物に出る時に、車の窓から見えたたくさんのヒマワリ。
テレビで観るような広さは無いけれど、大学にある図書館から見える花壇のヒマワリとは比べものにもならない程たくさんのヒマワリが咲いていた。
いつかここに彼を連れてきてあげたいと思っていた。
「美桜!ありがとう!」
「いいえ」
見てるこっちが嬉しくなる彼の笑顔に、やっぱり連れてきて良かったと思う。
むしろ連れて来られて良かった。
「ここって入ってもいいのかな?」
なんて聞いているけど、顔を見れば入る気満々なのが丸分かりだ。
「分かんないけど、雨でぬかるんでるよ?」
「あー…。じゃあ美桜はやめておく?」
ほら。入る気満々。
それが可笑しくて私はクスクス笑った。
「どうかした?」
私が笑っている意味が分からないらしく、彼は困惑の声を出して私の顔を覗く。
「何でもない。行こう」