遙か彼方


「毎年ちょうど私の誕生日に桜の花が満開になるの」

「へえ」

「だから桜が私の誕生日を祝ってくれてるみたいだなっていつも思う」

「いいね」

「うん」


本題はここから。


「だから私“美桜”って名前なの」

「ん?」

「桜が満開の時に生まれたから、“美しい桜”って書いて“美桜”」


そう。

大好きな私の名前には大好きな花の名前が入っている。


ううん、逆かもしれない。

大好きな花の名前が入っているから、大好きな私の名前。


どっちが先でも構わない。

結局どっちも大好きなんだ。


両親がつけてくれた“美桜”と言う名前も。

誕生日を祝ってくれてる満開の桜も。



「美しい桜か……」


そんな儚い声が彼から聞こえてきた。


「そうよ」

「僕も見てみたいな」

「今度見せてあげる」


そう言った私に彼が声と同様、儚げに笑った。



社交辞令だと思ってる?

そんなんじゃない。

だって私は社交辞令なんて大嫌い。

私は本気で言った。


また地球に戻って来たら見せてあげる。

病気を治してまた地球に来たらいいじゃない。




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