遙か彼方
「今度は僕の話聞いてくれる?」
「何?」
彼は緩ませていた口元をキュッと引き締める。
「美桜……」
「何?」
金の瞳が静かに真っ直ぐ私を見つめる。
何を言われるのか少し怖い…。
だけど私は彼の言葉を待つ。
一言も逃さないように。
「楽しかった。美桜に会えて良かった」
待った彼の言葉は、別れの言葉だった。
「……うん。私も」
「ありがとう」
「こちらこそ」
彼は右手を差し出した。
“握手”の意味。
……別れの。
私はその手をすり抜けて彼に抱きついた。
「うわっ」
強く突っ込み過ぎたのか、彼がよろめいてさっき差し出した右手を私の背中に当てる。
そんなことには構わず、私はギュッと腕に力を入れて抱きついた。
だって今日で最後かもしれない。
また地球に帰ってくればいい、なんて強気で思っていてもやっぱりそれは100%じゃない。
強気でいたいけど、良くないことも考えてしまう。
もしかしたら……。
って考えたくないことを考えてしまう。