遙か彼方
だけど彼の腕に力が入り、そうさせない。
「ごめん…」
苦しそうな声が私の耳元で聞こえた。
「佐山さんに言われたんだ」
何を言われるのかドキドキしていた私に予想外な言葉が届いた。
……佐山さん?
「男らしくないって」
何がなんだか分からないうちにも彼の話はどんどん進む。
「けじめをつけろって」
「ま、待って?」
そこでようやく私は口を挟む。
「ん?」
「佐山さんって?」
「佐山さん?」
「佐山さんと話したの?」
「うん」
分からない。
なんで?
いつ?
「何話したの?」
「だから、美桜のこと」
「わ、私?」
いや、そうか。
2人の共通の話と言ったら私の話しかない。
私の話以外のことを話していたら、逆におかしい。
「佐山さん、なんだって?」