遙か彼方
「だから……。じゃなくて」
「ん?」
「美桜」
「何?」
なかなか本題に入らない彼は少しじれったい。
「佐山さんのお陰で大事なことに気がついた。僕は間違ってたみたい」
「間違い?」
「僕……」
私の背中に回っていた手が肩の所まで上がってきて、更に強く抱きしめられた。
「───好き」
私の耳元で聞こえた声に、私の心臓が大きく鳴った。
嘘……。
嘘みたい……。
それは彼の口からは聞けないと思っていた言葉。
「美桜、好き」
甘い声は私の体に響く。
顔が火照る。
「美桜、大好き」
嬉しすぎて涙が出そう。