遙か彼方
彼は繋いでいなかった反対側の手も握って私と向かい合った。
「美桜もこのままじゃ駄目だよ」
「……え?」
彼の口からは思ってもみなかった言葉が出た。
「僕は美桜が心配だ。あの図書館に1人で居るところを想像すると胸が苦しい」
彼は眉間にしわを寄せて本当に苦しそうな表情を作る。
あぁ、葵は優しいな……。
「だから」
「うん」
「学校、戻ってほしい」
「……うん」
もう何ヶ月学校に行ってないんだろう。
私の席はまだあるのかな?
きっと無い。
退学になっているかもしれない。
そんな学校にどうやって戻ろうか。
だけど彼の言うことを守らないといけない気がする。
私の言うこともきいてもらったんだ。
だから今度は私が。
とりあえず学校に行ってみればいいか。
そしたらきっと何をしたらいいかわかる。
私はもう、何もかもが嫌になったあの頃とは違うんだ。