遙か彼方
「……いいけど」
そう言って一度視線を逸らして、再び彼の瞳に視線を向ければいつもの綺麗な金色になっていた。
何だったんだろう?
不思議に思ったけど、すぐに元に戻ったからあまり気にしなかった。
その時は知らなかった。
それがとても重要なサインだってことを─────。
別れなんてものは案外あっさりしたもので。
「じゃあ……、そろそろ行くね?」
「うん……」
“さよなら”を言わないと決めた私達は「またね」と手を振った。
私は彼が見えなくなるまで手を振った。
彼も見えなくなるまで何度も振り返った。
角を曲がる前にもう一度「またね」と叫んだ。
大きく手を振った。
彼の姿が角を曲がって、フッと消える。
たった今までそこに居た彼の姿が無くなって、そこはただの真っ暗闇になった。
私は急に寂しくなって立っていることさえ辛くて、その場にへたり込んだ。
これは永遠の別れじゃない。
前進のための一歩。
それが一時(イットキ)の別れという結果になったというだけのこと。
絶対……。
絶対、絶対……。
また会おう。
うなだれた顔を上げれば、夜空に一筋の星が流れた────。