遙か彼方
彼のいない世界
彼はいつの間にか私の世界になっていた。
彼のいない世界は、少し怖い。
だけど、約束した。
学校に通うこと。
そのために行動を起こそう。
私は大学に向かった。
お父さんに会う為に───。
「あっ、美桜ちゃん!」
お父さんの居る部屋へ向かう途中で声をかけられた。
ここで私をそんな風に呼ぶのは1人しかいない。
案の定、声の方に視線を向ければそこには佐山さんがいた。
「佐山さん」
「おはよう。これから図書館に行くの?」
「あ、いえ。父の所に」
私の言葉に佐山さんは「ん?」と首を傾げる。
「……高校に戻ろうと思います」
「本当!?」
佐山さんの予期せぬ大きな声に少し驚いた。
「え?」
そして何をそんなに嬉しそうにしているのかわからなくて、声に出てしまった。
「ん?良かったと思って」
「はぁ…」
「今まで何にも言わなかったけどさ、心配してたんだよ。美桜ちゃんがずっとこんな生活だったらどうしようって」
佐山さんはニコニコと私の肩を数回叩いた。
「良かった良かった」