遙か彼方


佐山さんが私のことを心配してくれていることはよく知っている。


だけど……、だからこそお父さんに彼のことを告げ口みたいに言ったことが、私を幻滅させる要因になった。

佐山さんがそんなことする人だと思わなかった。


優しく見守って、時には手を差し伸べてくれる。

そんな幻想を抱いていたに過ぎなかった。


お父さんの私に対する素っ気ない態度を見たからって、結局はお父さんの味方で。

私の気持ちなんて二の次なんだ。



「痛いです……」

「あー、ごめんごめん」


この目の前の笑顔ですら、疑ってしまう。



「…じゃあ、行きます」

「あ、うん。大丈夫?付いて行こうか?」

「大丈夫です」

「本当?」

「…父と、ちゃんと話せるようになりましたから」


“あなたのお陰で”そんな嫌みを込めた。

私の視線は知らず鋭くなる。



「え?」


だけど佐山さんは予想外の反応を示した。




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