遙か彼方
でも、お母さんがいなくなって私が寮で暮らすようになって。
葵にも佐山さんにも会えた。
だからいい。
そのことで文句は言わない。
「分かった。私もお母さんに会いたい」
「美桜…」
「見つけたらお説教だから」
「…あぁ、そうだな」
「何言ってるの。お父さんも怒られる側だから」
「そうか…。そうだな」
それから「当たり前でしょ」なんて言って笑った。
お父さんと一緒に笑った。
「あのね、お父さん…」
「ん?どうした?」
「私まだ実感出来ないんだ…。彼がいなくなったこと……」
「…そうか」
「またひょっこり図書館に来るんじゃないかって思う」
ちゃんと宇宙船に乗って帰って行くところを見れば良かったかな。
そうすればこんな事思わなかったかもしれない。
彼はまだすぐそばにいる気がしてならない。
「残念だけど、彼と会うことは二度とないよ」