遙か彼方
「え…」
言ってる意味がよく分からない。
「彼はもう、いないんだ」
お父さんの言う“いない”の意味が私の言う“いない”と違う意味に聞こえるのは、…気のせい?
カランと麦茶の氷が思い出したかのように音を出した。
それでもお父さんはまっすぐ私を見る。
私の方が、目が泳ぐ。
「私ね、約束したの。葵と。絶対また会おうって」
「彼とはもう会えない」
「病気を治して地球でまた会おうって」
「美桜」
「じゃなかったら私がハルカに行くからって」
「美桜、聞きなさい」
「だからいっぱい勉強してハルカの研究員になるの」
「美桜!」
「だから高校に行くの!!」
私はいつの間にか涙を流して喚いていた。
「約束…、したから……。したんだからぁ…」
「美桜…」
もう会えないなんて言わないでよ…。