遙か彼方


「え…」


言ってる意味がよく分からない。


「彼はもう、いないんだ」


お父さんの言う“いない”の意味が私の言う“いない”と違う意味に聞こえるのは、…気のせい?



カランと麦茶の氷が思い出したかのように音を出した。


それでもお父さんはまっすぐ私を見る。

私の方が、目が泳ぐ。



「私ね、約束したの。葵と。絶対また会おうって」

「彼とはもう会えない」

「病気を治して地球でまた会おうって」

「美桜」

「じゃなかったら私がハルカに行くからって」

「美桜、聞きなさい」

「だからいっぱい勉強してハルカの研究員になるの」

「美桜!」

「だから高校に行くの!!」



私はいつの間にか涙を流して喚いていた。


「約束…、したから……。したんだからぁ…」

「美桜…」



もう会えないなんて言わないでよ…。




< 181 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop