遙か彼方


帰ってきたお母さんは私を抱きしめて泣いた。

何度もごめんなさいと謝ってくれた。

私はやっぱり泣くことしか出来なくて、二人で抱き合いながらずっと泣いた。



帰ってきてくれただけで私は嬉しい。

この家で、また3人で暮らせることが嬉しい。

そうやって素直に思えるのは彼のお陰なんだ……。



佐山さんとは家に帰ってきた今でも交流がある。

お母さん捜しにお父さんが奮闘している中、佐山さんは相変わらず私のお世話係をしてくれた。

高校に戻る為に話をしに行かないといけないという時も、一緒に付いて来てくれた。


しょっちゅう家に遊びに来るから今ではお母さんとも仲良しで、お母さんも“息子が出来たみたいで嬉しい”と言って佐山さんのことを可愛がっているのが見ていて凄く分かる。



私は以前お父さんが言っていた佐山さんにとって私が特別な存在だということが、佐山さんと会う度に頭にチラついて仕方なかった。

だから訊いてみた。

“佐山さんは私のことが好きなの?”と。



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