遙か彼方
誕生日
誕生日の朝は清々しい程晴れた日で、少し前までコートを着ていたなんて思えないくらい暖かい朝だった。
「今日お母さん美桜の誕生日ケーキ作っておくから早く帰って来てね」
「えっ、手作り?」
「イヤ?」
「ううん。嬉しい」
そう言うとお母さんも嬉しそうに笑った。
「ごちそうさま」
私は朝ご飯を食べ終えて席を立った。
それとほぼ同時くらいにバタバタと慌ただしく階段を下りてくる音がする。
「遅刻だ!行ってきます!」
「お父さん!お弁当!」
早口でそう言って慌ただしく玄関に向かうお父さんの後をお母さんはお弁当箱を掴んで慌てて追いかけて行った。
「何やってんだか」
「本当にねぇ」
私の呆れた声にどこからともなく返事が来る。
声の方に視線を向ければ、ソファーの上でまったりと朝の情報番組を見ている佐山さんがいた。
居るのは気づいていたけど…。
「佐山さんこそ何してるの」
「昨日教授と飲んでたら寝ちゃったみたい」
テヘッと笑う佐山さん。
全然可愛くない。