遙か彼方
「それが違うんですよ。“私のこと好きなの?”って強気で訊かれちゃって」
「あら」
「あれは怖かった」
「あらまあ」
2人して口に手をやって私に横目を向けてヒソヒソと話す。
とてもイヤな感じ。
「私もう行くから」
付き合ってられない。
さっさと学校に行こう。
「あ、待って。俺も一旦帰るよ」
「佐山くーん。もういっそのことウチに住んじゃえばいいじゃない」
「それもいいですねぇ。検討してみます」
お母さんは本当に佐山さんのことが大好きだ。
佐山さんが居てくれるからお父さんは心置きなく仕事に専念出来ている。
お父さんは研究員は辞めたけど、大学病院の先生であることは変わりないから。
忙しいのは相変わらず。
そんな時、佐山さんが居てくれて良かったって思う。
お母さんが楽しそうにはしゃいでいる姿を見るとホッとする。