遙か彼方


そうやってふてくされ気味に“絶対他にも寝てる人がいる筈”と周りを見渡した。

そうしたら教室中の注目を集めていることに今更気がついた。


え?何?

私、寝言とか言っちゃったのかな?

それは恥ずかしすぎる。


気づけば前の方の席にいる友達が上半身を後ろに向けて私に熱い視線を送っていた。

その手はアッチアッチと窓の方を指差している。


え?外?


さらに彼女は口パクで何かを私に伝えようと頑張っている。


何?分かんないよ。

何て言ってるの?


“よ”?

“ん”?

よん?


“てる”?

よんてる?え?



「滝沢…」

「あっ、はい」


先生の存在をまるで無視して友達の口元にガッツリ釘付けだったところに再び名前を呼ばれた。


「授業中に寝るな」

「すみません」


ってさっき謝ったはず。

わざわざ言わなくてもいいと思う。

そしていつまでここに居るんだろう。

もういいので授業再開してください。




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