遙か彼方
階段を普段は絶対しない一段飛ばしで駆け下りて。
それから全速力で走って上履きのまま一気に外に踊り出た。
そこまで走って私は足を止めた…。
彼の姿が見えたから。
…───校庭の真ん中にぽつんと1人立っている。
桜の花びらがはらはらと舞う中立っている。
大きなサングラスをしていない。
LLサイズの黒いパーカーも着ていない。
白より白い肌。
白金のごわごわの髪。
……懐かしい笑顔。
彼が変わらない笑顔で両手を広げた。
それを合図に私は再び走り出す。
「…美桜」
「葵っ」
勢いづいて彼の胸に飛び込んだ。
「おっと」
そのままギュッと、ギューッと抱き締めた。
本物だ。
本当にここにいる。
私の目の前に彼がいる。
「おかえりなさい」
「───ただいま」