遙か彼方


訊きたいことはいっぱいある。

聞いてほしいこともいっぱいある。


だけど今は彼がいるだけで充分。

私今、凄く幸せ…。



「ちょっ」

「ん?」


そうやって幸せを感じている時、彼の困惑気味な声がした。


「ちょっと、痛い…」

「あ、ごめん」


どうやらギューッと力を込めすぎたみたい。

抱き締める力は緩めたけど離れることはしなかった。


そんな私を彼はクスクス笑う。


「何?」

「いや、元気だなと思って」

「私より葵は?葵は元気なの?」



発病したんじゃないの?

もう戻って来れないんじゃないの?

どうしてここに居るの?




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