遙か彼方
嵐は突然に
家庭が崩壊した。
それは私が高校に入学してすぐに起こった。
私の誕生日の次の日、4月9日。
お母さんが失踪した。
前の晩はお母さんと私の二人で、小さいホールのショートケーキを半分にして食べた。
ローソクを立てるなんてもう何年もなかったけど、昨日はお母さんがローソクを立てて火を点けてくれた。
それは今思えば、お母さんの中には“家を出て行こう”という、しっかりした決意があったからなのかもしれない。
そんなこと知りもしない私は、嬉しい様な恥ずかしい様な気持ちで火を吹き消した。