遙か彼方
今度は私が反対にギューッとされた。
「特効薬が完成したんだ」
「え?」
「僕の病気、治ったんだよ」
「本当!?」
私は身体を離して彼の顔を覗き込む。
「本当だよ」
そう言って穏やかに笑った彼の瞳は───黒かった。
金色の透き通った瞳じゃなかった。
私の顔がはっきりと写り込むほど真っ黒な瞳の色になっていた。
「治った証拠」
私の考えていることが分かったのか、彼が自分の目を指差してそう言った。
金色じゃなくなってしまったことは少し寂しい。
だけど新しい黒い瞳は───。
「綺麗…」
「ありがとう」
吸い込まれそうなくらいに凄く綺麗。