遙か彼方
朝起きて食堂に行く。
寮母さんの好意で夏休み中も食堂を閉めないでいてくれた。
『うちの子たちももう大きいから、家族で出掛けるとかしないのよね』
寮母さんはそう言っていた。
そう言われても、申し訳ない気持ちは変わらない。
お昼ご飯だってそう。
大学内にも食堂はあるらしい。
だから寮でお昼ご飯は出していなかった。
でも私一人の為にお昼ご飯を作ってくれる。
『簡単でごめんね』なんて言うけど、それだって手間を掛けてしまっているのに違いはない。
迷惑を掛けているのは分かりきっているのに、それを無くしてしまうと生活が出来なくなるから、断ることが出来ない。
私に使える自由なお金は財布に残っている僅かな小銭のみ。
お金があればどこかで食べてくるとか、コンビニのお弁当を買ってくるとか出来るのに。
そんな所をお父さんは分かっていない。
自由に使えるお金をくれてもいいのに。
……なんて文句を言える立場じゃないことは分かってる。
寮に入れてくれただけで感謝しないといけないことも分かってる。
ただ、寮の中はとても居心地が悪かった。