遙か彼方

怪しい人物との遭遇




…───誰?




私がお昼ご飯を食べに一度寮に帰って、もう一度図書館に戻ってきた時だった。



誰?

そこは私の場所なのに。



私の視線の先には小窓の前で胡座(アグラ)をかき、私が読み途中でそのままにしておいた本を読んでいる人が居る。


黒い長袖のパーカーのフードを深く被り、俯いているせいで顔は鼻の先も見えない。

体格は男の人のように見える。



私はここに人がいる光景を初めて見た。

私以外にここに来る人なんていないとすら思っていた。

だからこの光景が信じられなくて、私はその人から目が逸らせなかった。


一瞬、時が止まる────……。



それでも私はハッとした。


どうしよう。

誰だかわからないけど関わりたくない。

大学生なら尚のこと関わりたくない。


小心者の私が言った。

ここは逃げておこうか。



でも、ここは私の場所。

私の唯一の居場所を取られる訳にはいかない。


ここだけは守らなければ。



「…………だ、誰?」


久々に出した声は、第一声が掠れてしまった。

なんて情けない声……。





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