遙か彼方
私の声にその人は肩をビクッと震わせた。
「あ、人……」
そう言って上げた顔には大きくて真っ黒なサングラスが掛けられていた。
フードから少しはみ出た髪は金髪よりも色が入っていなくてほぼ真っ白。
そして顔色は異様に悪い。
肌の色の白さじゃない。
何て言うか……凄く、白い。
真っ白な肌は血が通っていないかのように思える程に白かった。
でもそんな訳がない。
もしかして気分でも悪い?
白いのはそのせい?
「大丈夫、ですか…?」
「え?」
「顔色、悪いみたい…」
「……あー。大丈夫」
彼はそう言って口の両端をあげたから多分微笑んでいる。
顔の大部分がサングラスとフードで隠れているから、表情が分かりにくい。
それにしても何だろう、この人。
確実に“変”。
夏なのに長袖だし。
こんな薄暗い所でサングラス掛けてるし。
それよりも何で、私の本読んでるんだろう。