遙か彼方



どうやら彼は正体を証す気はないらしい。

三度も同じ質問をする気はない。


「誰だか知らないけど、そこは私の場所なのでどいてください」

「………」

何故か分からないけど。

サングラスで分からないけど。

たぶん、見つめられてる……。



「な、何?」

「いや。そう、君の場所なんだ」



何だったの、今の沈黙は。

私おかしなこと言った?

私の場所じゃいけない?



すると彼が立ち上がる。



「君、名前何て言うの?」

私に近付いてきながら、彼は言った。


自分の正体は証さないくせに、私には名を名乗れと言っている。

それは理不尽じゃない?


だから彼が目の前に来た時に言ってやった。






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