遙か彼方
朝、まだ新しい制服に着替えてリビングに降りると、いつもは居る筈のお母さんの姿が見えなかった。
まだ寝ている?
そう思った考えはすぐに違うと気が付く。
ダイニングテーブルの上には一人分の朝食が用意されていた。
それは私の座る位置の前に。
それがどういう意味なのか分からなかった。
分かることは、家の中にお母さんは居ないということ。
お母さんはパートで働きに出てはいるものの、私の登校時間より早く家を出る必要はない。
なら、どこへ行った?
検討が付かなくて、考えることを止めた私は朝食の用意がしてある席に座った。
その内帰ってくるだろうと安易な考えで。
朝食はご飯とお味噌汁と豚のしょうが焼き。
朝からお肉?
そんなことに少し笑った。
でも私の視線はある一点を捉える。
しょうが焼きのお皿の下に、紙の角が少しはみ出していた。
お皿を浮かせてその紙を引き出すと、そこには見慣れたお母さんの字があった。