遙か彼方



彼は言った『明日も来る』と。

それに対して私は言った『だめじゃない』と。


落ち着いてよく考えたら、それはおかしくない?



私は『ここは私の場所』と言って彼を追い出した。

彼もそれを分かって出て行ったんでしょう?


明日も来たら今日したことの意味がない。




そもそもどうして『だめじゃない』と言った?

『だめだ』と言えば良かっただけの話じゃない?


きっと動揺していたに違いない。

滅多にしない“ときめき”のせいで、テンパっていたに違いない。



そうだ。

明日来たって、また追い出せばいい。

そうしよう。




私は気を取り直して本を開いた。

私の読み途中のページにはちゃんと栞(シオリ)用の紐が挟まっている。



でも、読み始めても内容が頭に入ってこない。

気が付けばさっきの彼のことを思い出してしまっていた。


今日はだめだ。

読んでるのに読んでない。




私は気分を変えようと、立ち上がってカーテンを開けた。


目の前の花壇には、沢山のヒマワリが太陽を愛おしそうに見上げていた─────。






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